ゲームを制作する上で現在重要となっているゲームエンジン。最近ではUnityがかなり幅をきかせていました。それに比べ、2番手とも言えたUnrealEngine(またはUDK)は「性能はすごいが正直高い」「書籍・ネットでの資料が少ない」「癖が強すぎる」「Epic放置してる?」といった表現が似合うほどの評価であったと思います。
ところが、3月20日にEpic Gamesがゲームエンジン「Unreal Engine 4」(アンリアルエンジン4 以下UE4)を月額19ドルのサブスクリプション制(+5%のロイヤリティ料金)にして、ソースコード(C++)の公開をすると発表。今まで高いと思われていた高機能ゲームエンジンのUEの身近に手軽に使えるようになり、注目されて話題になりました。
そして株式会社ヒストリカの佐々木 瞬氏を主催とするUE4のビギナー向け勉強会が4/12に行うと告知すると、当初は30人ほど想定があれよあれよと枠を拡大して300人になるほどの注目ぶりはやはりゲームを開発しようとする日本のディベロッパーに相当のインパクトを与えたものと思われます。(もちろん自分もそこに含まれます。)その告知はこちら。
インストールして少し触っただけの状態でしたが、その勉強会に参加してきました。
場所は六本木ヒルズ森タワーのGREEさん。
初めてヒルズ界隈に行きましたが、なかなかにわかりにくい場所で迷いつつも無事に到着。森タワー入口で入館証をもらい、緊張しつつも中へ。
GREEさん提供の水をいただいてから会場に入ると、相当な数の人数がすでに入っていました。半分くらい埋まってると思いましたが、どうやら800人収容の会場だったようで・・・そうなると相当数の参加率ですね。Twitterのタイムラインを見ると、UnityやOculus Riftで有名な方々もかなりいらしていたようです。(実際に何人か知ってるなあと思われる方々を見かけました)現に開始前の前座に主催の佐々木さんがTLで気になるツイート(#UE4Studyタグのついたもの)を確認するとスクリーンには多くのUnity関連ネタが渦巻き、笑いもそこで起こっていましたから。(Unityちゃん、Unity仮面、UnityTシャツなど)
10分ほど遅れて始まった勉強会。(というか講演)
まずはオープニングとして佐々木さんがご本人とこの勉強会についての説明がありました。多くの方々や企業の協力があって成り立ったとのこと。本当にありがたいことです。
「Session1. はじめてのUnreal Engine 4 (60分)」
主催の佐々木氏によるUE4の主な特徴と今回追加された注目機能についての解説が中心。
プログラマ以外の人もそれぞれがいじることができて、分業がしやすいというのは印象的。
UE4に用意されたサンプルの豪華さや豊富さをしっかり伝えられ、自分もやってみようかなと思わせるいい導入だったと思います。
10分休憩。
大人数に加え、男性率の高さからトイレの行列がすごくて焦りましたね。(結局10分から延長)
「Session2. Blueprintでさくっとマイゲームを作ってみる (40分)」
バンダイナムコの湊さんによる新機能である「Blueprint」(ブループリント:青写真)を使ってゲーム作りの基本とも言えるブロック崩しを38分で作るというライヴコーディング。(性質上コーディングとは言いにくいけど・・・)
この方はご自身が気に入ったゲーム開発関係書籍の和訳もやられていて、自分も何冊か保有しています。以下著書。
Blueprintはこんな感じのノード形式。解説にもありましたが、フローチャートがわかる人にはそのままなのですぐにイメージできそうです。
てっきりあまりコメントせずにガッと作って後で解説すると構成と思っていましたが、軽快なトークと操作でポンポンとできあがっていきます。ノード形式のBlueprintは視覚的にわかりやすい反面、逆にごちゃごちゃになりそうな印象も受けましたが、やってみないと何とも言えませんね。笑いも頻繁に起き、ひっかかりそうなところも見えて、非常に興味深いセッションでした。結局最後のところでちゃんと壊れていたブロックが壊れなくなったという状態で残念ながら終了。
「Session 3. Blueprintでさくっと作ったマイゲーム・解説編 (50分)」
Session2の解説。Blueprintの説明から、衝突(コリジョン)の回避、入力のバインド、ご自身の作成している和風ゲームなどの紹介。ここでも実際の業務でも出てきた内容などを踏まえながら、ポイントを楽しく紹介されていました。
質問コーナーでは講演中たびたび講演者から質問や確認を求められるという不思議な展開にもしっかり対応されたエピックゲームズジャパンの下田さんを中心に主にサンプル画像やアセットの扱いについて回答。基本的にEpicGamesが提供しているものはアプリの状態であれば公開しても大丈夫。ただしサブスクリプション契約していない人が素材などに直接アクセスできるような形式(再配布など)での公開はダメ。
また湊さんはUE4の本執筆をしているらしいので期待。あとソースコードも公開するかもとのこと。
「謝辞・質問(主にライセンス)」
今回の勉強会に当たって多くの協力者の紹介。
GREEさん:会場と水の提供してくださったGREEさんのおかげで相当助かったとのこと。
エピックゲームズジャパンさん:懇親会の費用を出していただいたとのこと。
有志の方々:多くのサポートをしていただいた。
無料でこれだけの人数の勉強会および懇親会を実施できたとのは上記の協力あってのこと。本当にありがとうございました。
またエピックゲームズジャパンの川崎さんがライセンスについての質問受け付け。
大まかに言うと・・・
・ゲーム以外のロイヤリティは発生しない。(研究や映像・アーケードゲーム)
・サブスクリプションはユーザー単位。ユーザーのPCならばインストール台数制限なし
・特殊なケースの場合はエピックゲームズジャパンに直接問い合わせて欲しい
・審査などは特にしないが、非合法なもの、ギャンブルなどには使用できない
どうもエピックゲームズ内でも突貫工事気味で細かい部分が決まっていない模様。
以上で懇親会。参加しない方はここで解散となりました。
懇親会に参加したかったのですが、自分は椅子が硬かったせいか治ったと思われた歯の痛みが出てきたので断念。お寿司やピザやからあげがあり、またOculus勢もかなり参加されていた様子。ああ・・・参加したかった・・・。
以上でレポートは終了。
今回の勉強会を見て、UnityからUE4に移行しようとするユーザーは自分も含めて多そうです。
ただしそれには課題があって、まず情報量の少なさとコミュニティが小さすぎる点。
情報量についてはUDKとかUE3の場合はあまりにも少なくて、Oculusいじろうとした際にどうすればいいのか全然ヒットしない状況でしたから。Unityはコミュニティが活発化しているのがかなり強みですので、UE4もそれにならい今後どんどん広まっていくといいですね。
あとは動作環境が結構シビアであるのは注意。64Bitでないとダメ、GPU性能もかなり要求されています。実際にノートのGT635MやGT650Mで操作していても動作が緩慢になるケースが多いです。
公式から要求スペックの部分を引用すると
Desktop PC or Mac
Windows 7 64-bit or Mac OS X 10.9.2 or later
Quad-core Intel or AMD processor, 2.5 GHz or faster
NVIDIA GeForce 470 GTX or AMD Radeon 6870 HD series card or higher
8 GB RAM
実際に今回デモをしていただいた方々のPCはALIENWAREノートブックでした。
またUnityも5では物理レンダリングに対応してくるので要求スペックがかなり上がることが予想されます。ですので今後はゲーミングパソコンのしかもそれなりにハイスペックなものが開発でも必要になってくる感じですね。
対してUnityは無料版でもかなりのことはできますが、結局Pro版でないとダメという部分がやはり大きくライセンス料金が(UE4と比べて)高いというのが今後ネックになりそうです。Oculusもちゃんとした動作はPro版が必要。モバイルプラットフォーム対応の場合はそれぞれのPro版で相当の金額が必要になります。15万円(年間Proライセンス)+15万円(AndroidのPro)+15万円(iOSのPro)みたいな感じですからね。ただ情報量の多さや無料版で公開までは普通にできることを考えればUnityはやはり大きい。このあたりUnityがどう出てくるかは興味深いです。
いかに優れたゲームエンジンが手軽に使えるようになったとは言え、結局深いところでの問題は解決が普通以上に難しくなるとか振り回されるとかの問題はどうしても出てくるでしょうし、ゲームエンジンしか使えないという形にはならないようにしないといけませんね。あと簡単にできるんだから単価は安くていいよね?とかは勘弁ですが・・・
いずれにせよUnity5が発表され、UE4が注目され、それに続くCryEngineもUE4を上回るライセンス料金で対抗するなど熾烈な争いが出てきていますが、いい形で切磋琢磨してもらいたいもの。もちろん各エンジンのユーザー側もコミュニティや情報などの発信、制作したアプリの公開などで盛り上がるといいですね。
今回の勉強会は自分も含めて多くの方がUE4の機能や素晴らしさにワクワクしたのではないかと思います。そういった場を設けていただいた主催者の佐々木氏をはじめ、多くの協力者・企業に感謝いたします。ありがとうございました。また何かの形で開催されるようであればぜひ参加したいですね。
参加して「すげえ」「便利だなあ」で終わってはもったいないので、まずUE4を触ってみることから始めてみようと思います。
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